(4) 情報と伝達
情報と伝達とは、必要な情報が識別、把握及び処理され、組織内外及び関係者相互に正しく伝えられることを確保することをいう。組織内のすべての者が各々の職務の遂行に必要とする情報は、適時かつ適切に、識別、把握、処理及び伝達されなければならない。また、必要な情報が伝達されるだけでなく、それが受け手に正しく理解され、その情報を必要とする組織内のすべての者に共有されることが重要である。
① 情報の識別・把握・処理
組織は、認識された情報の中から真実かつ公正な情報を特定し(識別)、当該情報が組織にとって必要であると判断した場合には、その情報を情報システムに取り入れる(把握)。情報システムとは、手作業によるか、機械化された情報システムによるかにかかわらず、情報を処理及び伝達するための仕組みをいい、情報システムに取り入れられた情報は、分類、整理、選択、演算など、目的に応じて加工される(処理)。
② 情報の伝達
組織においては、識別、把握、処理された情報が組織内又は組織外に適切に伝達される仕組みを整備することが重要となる。組織内においては、例えば、経営者の方針は組織内のすべての者に適時かつ適切に伝達される必要がある。また、不正又は誤謬等の発生に関する情報など内部統制に関する重要な情報が、経営者及び組織内の適切な管理者に適時かつ適切に伝達される仕組みを整備することが重要である。
一方、情報は組織外に対して適切に伝達又は報告される必要があり、例えば、株主、監督機関その他の外部の関係者に対する報告や開示等において、適正に情報を提供していく必要がある。また、不正又は誤謬等の重要な情報は、取引先等の関係者を通じて、組織の外部から提供されることがあるため、情報を組織の外部に伝達又は報告する仕組みだけでなく、組織の外部からの情報を入手するための仕組みも整備することが重要である。
③ 内部通報制度など
組織においては、通常の伝達経路ではないものの、組織の情報と伝達及びモニタリングの仕組みの一つとして、内部通報制度を設ける場合がある。内部通報制度は、法令等の遵守等をはじめとする問題について、組織のすべての構成員から、経営者、取締役会、監査役又は監査委員会、場合によっては弁護士等の外部の窓口に直接、情報を伝達できるようにするものである。内部通報制度を導入する場合、経営者は、内部通報制度を有効に機能させるために、通報者を保護する仕組みを整備するとともに、必要な是正措置等を取るための方針及び手続を整備することが重要である。
また、組織外部の者から内部統制に関する情報が提供されることもあることから、こうした情報が寄せられた場合にどのように対応するかについての方針及び手続を定めておくことが重要である。
④ 他の基本的要素との関係
情報と伝達は、内部統制の他の基本的要素を相互に結びつけ、内部統制の有効な運用を可能とする機能を有している。
例えば、統制環境において新たな経営方針を策定した場合、この内容が組織の適切な者に伝えられ、その内容が正確に理解されることにより、適時にリスクの評価と対応が行われ、適切な統制活動が実施される。
一方で、統制活動やモニタリングにおいて内部統制の不備に関する重要な情報が発見された場合は、その情報が経営者又は適切な管理者に伝達されることにより、必要に応じて統制環境に含まれる全社的な計画、方針等が変更される。
組織の内部統制の有効性を確保するためには、組織の情報システムが適切に構築され、質の高い情報と適切な伝達の経路が確保されることが重要である。