(2) 評価の範囲の決定
経営者は、内部統制の有効性の評価に当たって、財務報告に対する金額的及び質的影響の重要性を考慮し、以下の事項等に関して合理的に評価の範囲を決定し、当該内部統制の評価の範囲に関する決定方法及び根拠等を適切に記録しなければならない。
○ 財務諸表の表示及び開示
○ 企業活動を構成する事業又は業務
○ 財務報告の基礎となる取引又は事象
○ 主要な業務プロセス
これらの事項については、重要な事業拠点の選定を踏まえ、財務諸表の表示及び開示について、金額的及び質的影響の重要性の観点から、評価の範囲を検討する。
この検討結果に基づいて、企業活動を構成する事業又は業務、財務報告の基礎となる取引又は事象、及び主要な業務プロセスについて、財務報告全体に対する金額的及び質的影響の重要性を検討し、合理的な評価の範囲を決定する。
○ 財務諸表の表示及び開示
○ 企業活動を構成する事業又は業務
○ 財務報告の基礎となる取引又は事象
○ 主要な業務プロセス
これらの事項については、重要な事業拠点の選定を踏まえ、財務諸表の表示及び開示について、金額的及び質的影響の重要性の観点から、評価の範囲を検討する。
この検討結果に基づいて、企業活動を構成する事業又は業務、財務報告の基礎となる取引又は事象、及び主要な業務プロセスについて、財務報告全体に対する金額的及び質的影響の重要性を検討し、合理的な評価の範囲を決定する。
経営者は、全社的な内部統制の評価を行い、その評価結果を踏まえて、業務プロセスの評価の範囲を決定する。
なお、全社的な内部統制については、以下の「業務プロセスに係る評価の範囲の決定」において記述する手順により評価の範囲を決定する対象には含まれず、原則として、すべての事業拠点について全社的な観点で評価することに留意する。
ただし、財務報告に対する影響の重要性が僅少である事業拠点に係るものについて、その重要性を勘案して、評価対象としないことを妨げるものではない。
〔業務プロセスに係る評価の範囲の決定〕
主として経理部門が担当する決算・財務報告に係る業務プロセスのうち、全社的な観点で評価することが適切と考えられるものについては、全社的な内部統制に準じて、すべての事業拠点について全社的な観点で評価することに留意する。
(注)全社的な観点で評価することが適切と考えられる決算・財務報告プロセスには、例えば、以下のような手続が含まれる。
・総勘定元帳から財務諸表を作成する手続
・連結修正、報告書の結合及び組替など連結財務諸表作成のための仕訳とその内容を記録する手続
・財務諸表に関連する開示事項を記載するための手続
ただし、財務報告に対する影響の重要性が僅少である事業拠点に係るものについて、その重要性を勘案して、評価対象としないことを妨げるものではない。
上記以外の業務プロセスについては、以下の手順で評価範囲を決定する。
① 重要な事業拠点の選定
企業が複数の事業拠点を有する場合には、評価対象とする事業拠点を売上高等の重要性により決定する。例えば、本社を含む各事業拠点の売上高等の金額の高い拠点から合算していき、連結ベースの売上高等の一定の割合に達している事業拠点を評価の対象とする。
(注1)事業拠点は、必ずしも地理的な概念にとらわれるものではなく、企業の実態に応じ、本社、子会社、支社、支店のほか、事業部等として識別されることがある。
また、事業拠点を選定する指標として、基本的には、売上高が用いられるが、企業の置かれた環境や事業の特性によって、異なる指標や追加的な指標を用いることがある。
(注2)一定割合をどう考えるかについては、企業により事業又は業務の特性等が異なることから、一律に示すことは困難であると考えられるが、全社的な内部統制の評価が良好であれば、例えば、連結ベースの売上高等の一定割合を概ね2/3程度とし、これに以下②で記述する、重要性の大きい個別の業務プロセスの評価対象への追加を適切に行うことが考えられる。なお、連結ベースの売上高に対する一定割合ではなく、内部取引の連結消去前の売上高等に対する一定割合とする方法も考えられる。
(注3)関連会社については、連結ベースの売上高に関連会社の売上高が含まれておらず、当該関連会社の売上高等をそのまま一定割合の算出に当てはめることはできないことから、別途、各関連会社が有する財務諸表に対する影響の重要性を勘案して評価対象を決定する。
なお、期末日直前の買収・合併、災害等、評価作業を実施することが困難な事情がある重要な事業拠点については、評価対象から除外することができるが、この場合には、内部統制報告書において評価範囲の限定の記載を行う必要があることに留意する。
② 評価対象とする業務プロセスの識別
イ.①で選定した重要な事業拠点(持分法適用となる関連会社を除く。)における、企業の事業目的に大きく関わる勘定科目(例えば、一般的な事業会社の場合、原則として、売上、売掛金及び棚卸資産)に至る業務プロセスは、原則として、すべてを評価の対象とする。
ただし、例えば、当該重要な事業拠点が行う重要な事業又は業務との関連性が低く、財務報告に対する影響の重要性も僅少である業務プロセスについては、それらを評価対象としないことができる。その場合には、評価対象としなかった業務プロセス、評価対象としなかった理由について記録しておく必要があることに留意する。
なお、棚卸資産に至る業務プロセスには、販売プロセスの他、在庫管理プロセス、期末の棚卸プロセス、購入プロセス、原価計算プロセス等が関連してくると考えられるが、これらのうち、どこまでを評価対象とするかについては、企業の特性等を踏まえて、虚偽記載の発生するリスクが的確に把えられるよう、適切に判断される必要がある。
一般に、原価計算プロセスについては、期末の在庫評価に必要な範囲を評価対象とすれば足りると考えられるので、必ずしも原価計算プロセスの全工程にわたる評価を実施する必要はないことに留意する。
ロ.①で選定された事業拠点及びそれ以外の事業拠点について、財務報告への影響を勘案して、重要性の大きい業務プロセスについては、個別に評価対象に追加する。その際の留意点は以下のとおりである。
a.リスクが大きい取引を行っている事業又は業務に係る業務プロセス
例えば、財務報告の重要な事項の虚偽記載に結びつきやすい事業上のリスクを有する事業又は業務(例えば、金融取引やデリバティブ取引を行っている事業又は業務や価格変動の激しい棚卸資産を抱えている事業又は業務など)や、複雑な会計処理が必要な取引を行っている事業又は業務を行っている場合には、当該事業又は業務に係る業務プロセスは、追加的に評価対象に含めることを検討する。
b.見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセス
例えば、引当金や固定資産の減損損失、繰延税金資産(負債)など見積りや経営者による予測を伴う重要な勘定科目に係る業務プロセスで、財務報告に及ぼす影響が最終的に大きくなる可能性があるものは、追加的に評価対象に含めることを検討する。
c.非定型・不規則な取引など虚偽記載が発生するリスクが高いものとして、特に留意すべき業務プロセス
例えば、通常の契約条件や決済方法と異なる取引、期末に集中しての取引や過年度の趨勢から見て突出した取引等非定型・不規則な取引を行っていることなどから虚偽記載の発生するリスクが高いものとして、特に留意すべき業務プロセスについては、追加的に評価対象に含めることを検討する。
d.上記その他の理由により追加的に評価対象に含める場合において、財務報告への影響の重要性を勘案して、事業又は業務の全体ではなく、特定の取引又は事象(あるいは、その中の特定の主要な業務プロセス)のみを評価対象に含めれば足りる場合には、その部分だけを評価対象に含めることで足りる。
〔監査人との協議〕
監査人による評価範囲の妥当性の検討の結果、後日、経営者の決定した評価範囲が適切でないと判断されることが考えられ、この場合、経営者は、新たな評価範囲について、評価し直す必要が生じるが、その手続の実施は、時間的な制約等から困難になる場合も想定される。したがって、経営者は、評価の範囲を決定した後に、当該範囲を決定した方法及びその根拠等について、必要に応じて、監査人と協議を行っておくことが適切である。