(4) 内部統制の有効性の判断
経営者は、財務報告に係る内部統制の有効性の評価を行った結果、統制上の要点等に係る不備が財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い場合は、当該内部統制に重要な欠陥があると判断しなければならない。
① 全社的な内部統制の有効性の判断
イ.不備の評価
全社的な内部統制の不備は、業務プロセスに係る内部統制にも直接又は間接に広範な影響を及ぼし、最終的な財務報告の内容に広範な影響を及ぼすことになる。
したがって、全社的な内部統制に不備がある場合には、業務プロセスに係る内部統制にどのような影響を及ぼすかも含め、財務報告に重要な虚偽記載をもたらす可能性について慎重に検討する必要がある。
ロ.有効性の判断
全社的な内部統制が有効であると判断するには、全社的な内部統制が財務報告に係る虚偽の記載及び開示が発生するリスクを低減するため、以下の条件を満たしていることが重要となる。
・全社的な内部統制が、一般に公正妥当と認められる内部統制の枠組みに準拠して整備及び運用されていること。
・全社的な内部統制が、業務プロセスに係る内部統制の有効な整備及び運用を支援し、企業における内部統制全般を適切に構成している状態にあること。
ハ.全社的な内部統制に不備がある場合
全社的な内部統制に不備がある場合、内部統制の有効性に重要な影響を及ぼす可能性が高い。内部統制の重要な欠陥となる全社的な内部統制の不備として、例えば、以下のものが挙げられる。
a.経営者が財務報告の信頼性に関するリスクの評価と対応を実施していない。
b.取締役会又は監査役若しくは監査委員会が財務報告の信頼性を確保するための内部統制の整備及び運用を監督、監視、検証していない。
c.財務報告に係る内部統制の有効性を評価する責任部署が明確でない。
d.財務報告に係るITに関する内部統制に不備があり、それが改善されずに放置されている。
e.業務プロセスに関する記述、虚偽記載のリスクの識別、リスクに対する内部統制に関する記録など、内部統制の整備状況に関する記録を欠いており、取締役会又は監査役若しくは監査委員会が、財務報告に係る内部統制の有効性を監督、監視、検証することができない。
f.経営者や取締役会、監査役又は監査委員会に報告された全社的な内部統制の不備が合理的な期間内に改善されない。
全社的な内部統制に不備がある場合でも、業務プロセスに係る内部統制が単独で有効に機能することもあり得る。ただし、全社的な内部統制に不備があるという状況は、基本的な内部統制の整備に不備があることを意味しており、全体としての内部統制が有効に機能する可能性は限定されると考えられる。
② 業務プロセスに係る内部統制の有効性の判断
イ.内部統制の整備状況の有効性の評価
内部統制が有効に整備されているか評価する場合には、内部統制が財務諸表の勘定科目、注記及び開示項目に虚偽記載が発生するリスクを合理的なレベルまで低減するものとなっているか確認する。
ロ.内部統制の運用状況の有効性の評価
経営者は、内部統制が所期の通り実際に有効に運用されているかを評価する。その場合、それぞれの虚偽記載のリスクに対して内部統制が意図した通りに運用されていることを確認しなければならない。
ハ.虚偽記載が発生する場合の影響度と発生可能性の評価
内部統制の不備が重要な欠陥に該当するか否かを評価するために、内部統制の不備により勘定科目等に虚偽記載が発生する場合、その影響が及ぶ範囲を推定する。さらに、内部統制の不備による影響額を推定するときには、虚偽記載の発生可能性も併せて検討する必要がある。
内部統制の不備が複数存在する場合には、それらの内部統制の不備が単独で、又は複数合わさって、重要な欠陥に該当していないかを評価する。すなわち、重要な欠陥に該当するか否かは、同じ勘定科目に関係する不備をすべて合わせて、当該不備のもたらす影響が財務報告の重要な事項の虚偽記載に該当する可能性があるか否かによって判断する。例えば、売掛金勘定の残高は、販売業務プロセスでの信用販売と入金業務プロセスの代金回収の影響を受けるが、この両方の業務プロセスに不備がある場合は、それぞれの不備がもたらす影響を合わせて、売掛金勘定の残高に及ぼす影響を評価しなければならない。
また、集計した不備の影響が勘定科目ごとに見れば財務諸表レベルの重要な虚偽記載に該当しない場合でも、複数の勘定科目に係る影響を合わせると重要な虚偽記載に該当する場合がある。この場合にも重要な欠陥となる。
さらに、勘定科目等に虚偽記載が発生する可能性と影響度を検討するときには、個々の内部統制を切り離して検討するのではなく、個々の内部統制がいかに相互に連係して虚偽記載が発生するリスクを低減しているかを検討する必要がある。そのために、ある内部統制の不備を補う内部統制(補完統制)の有無と、仮に補完統制がある場合には、それが勘定科目等に虚偽記載が発生する可能性と金額的影響をどの程度低減しているかを検討する。
内部統制の不備による影響金額の算定方法については、「Ⅲ 財務報告に係る内部統制の監査」4.(2)④ 業務プロセスに係る内部統制の不備の検討に詳細を記載しており、これは評価に当たっても参考になると考えられる。
③ ITに係る内部統制の有効性の判断
イ.ITに係る全般統制に不備がある場合
ITに係る全般統制に不備がある場合には、代替的又は補完的な他の内部統制により、財務報告の信頼性という目的が達成されているかを検討する。
ITに係る全般統制の不備は、財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクに直接に繋がるものではないため、直ちに重要な欠陥と評価されるものではない。しかし、ITに係る全般統制に不備があった場合には、たとえITに係る業務処理統制が有効に機能するように整備されていたとしても、その有効な運用を継続的に維持することができない可能性があり、虚偽記載が発生するリスクが高まることとなる。
ロ.ITに係る業務処理統制に不備がある場合
ITに係る業務処理統制に不備がある場合には、業務プロセスに係る内部統制に不備がある場合と同様に、その影響度と発生可能性の評価を行う。
ITに係る業務処理統制のうち、人とITが一体となって機能する統制活動に不備がある場合に、経営者は、その不備の内容が、人に関する部分から生じているものなのか、それともITに関する部分から生じているものなのかを識別する必要がある。ITに関する部分から生じている場合には、同じ種類の誤りが繰り返されている可能性があることに留意する。
④ 不備等の報告
財務報告に係る内部統制の評価の過程で識別した内部統制の不備及び重要な欠陥は、その内容及び財務報告全体に及ぼす影響金額、その対応策、その他有用と思われる情報とともに、識別した者の上位の管理者等適切な者にすみやかに報告し是正を求めるとともに、重要な欠陥(及び、必要に応じて内部統制の不備)は、経営者、取締役会、監査役又は監査委員会及び会計監査人に報告する必要がある。なお、重要な欠陥が期末日に存在する場合には、内部統制報告書に、重要な欠陥の内容及びそれが是正されない理由を記載しなければならない。