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(2) 評価範囲の妥当性の検討

監査人は、経営者により決定された内部統制の評価の範囲の妥当性を判断するために、経営者が当該範囲を決定した方法及びその根拠の合理性を検討しなければならない。
 特に、監査人は、経営者がやむを得ない事情により、内部統制の一部について十分な評価手続を実施できなかったとして、評価手続を実施できなかった範囲を除外した内部統制報告書を作成している場合には、経営者が当該範囲を除外した事情が合理的であるかどうか及び当該範囲を除外することが財務諸表監査に及ぼす影響について、十分に検討しなければならない。
① 重要な事業拠点の選定
 監査人は、経営者が評価対象とする重要な事業拠点の決定過程を理解し、経営者が重要な事業拠点を「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」に照らして、適切に選定しているか確認する。
 その際、監査人の実施する手続としては、例えば、以下のものが挙げられる。
・子会社、関連会社等を含め当該企業における連結ベースのすべての事業拠点を網羅した事業拠点の一覧を入手する。
・事業拠点は、企業の実態に応じ、本社、子会社、支社、支店、事業部等として識別されることがあるが、その識別の方法及び識別された結果が、適切であるか確認する。
・重要な事業拠点を選定するための指標としては、売上高等が基本となるが、経営者の採用した指標が「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」に照らして、適切であるか確認する。
・重要な事業拠点が経営者の採用した指標に基づき適切に選定されているか確認する。
・経営者の行った重要な事業拠点の選定の過程や結果が適切でないと判断した場合には、経営者に対し重要な事業拠点の選定の見直しなどの追加的な作業を求める。
② 評価対象とする業務プロセスの識別
イ.重要な事業拠点における企業の事業目的に関わる業務プロセス
 監査人は、重要な事業拠点について、売上、売掛金、棚卸資産など企業の事業目的に大きく関わる重要な勘定科目に至る業務プロセスが、「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」に照らして適切に評価対象とされているか確認する。
 また、監査人は、経営者が、当該重要な事業拠点が行う事業との関連性が低く、財務報告に対する影響の重要性も僅少であるとして評価対象としなかった業務プロセスがある場合には、その適切性を確認する。
 これらについて、監査人は、「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」3.(7)① ハ.ニ.ホ.ヘ.に記載の内部統制の記録の閲覧や経営者及び適切な管理者又は担当者に対する質問等により、評価対象となる業務プロセスの選定の適切性を確認する。
 監査人は、経営者が評価対象とした業務プロセスが適切でないと判断した場合には、経営者に対し評価対象とした業務プロセスの見直しなどの追加的な作業を求める。
ロ.財務報告に重要な影響を及ぼす業務プロセス
 監査人は、重要な事業拠点及びそれ以外の事業拠点において、財務報告に重要な影響を及ぼす業務プロセスがある場合に、それが「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」に照らして適切に追加的な評価対象とされているか確認する。
 この際、監査人は、「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」3.(7)① ハ.ニ.ホ.ヘ.に記載の内部統制の記録の閲覧や経営者及び適切な管理者又は担当者への質問等により確認を行うが、財務諸表監査を通じて、財務報告に重要な影響を及ぼす業務プロセスの存否に係る検証が既に行われている場合には、その利用が可能であることに留意する。
 監査人は、リスクが大きい取引を行っている事業又は業務の識別が適切でないなど、経営者が評価対象とした業務プロセスが適切でないと判断した場合には、経営者に対し評価対象とした業務プロセスの見直しなどの追加的な作業を求める。
ハ.全社的な内部統制の評価結果を踏まえた評価範囲、方法等の調整
 全社的な内部統制の評価結果を踏まえて、経営者が業務プロセスに係る評価の範囲、方法等を調整している場合(「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」3.(2)③ 参照)、監査人は、当該調整の妥当性について、「Ⅱ 財務報告に係る内部統制の評価及び報告」3.(7)① ハ.ニ.ホ.ヘ.に記載の内部統制の記録の閲覧や経営者及び適切な管理者又は担当者への質問等により確認する。
 なお、監査人は、経営者の行った調整が適切でないと判断した場合には、経営者に対し適切な評価の範囲、方法等に修正するための追加的な作業を求める。
③ 経営者との協議
 監査人による評価範囲の妥当性の検討の結果、経営者の決定した評価範囲が適切でないと判断されることが考えられ、この場合、経営者は新たな評価範囲について評価し直す必要が生じるが、その手続の実施には時間的な制約等の困難が伴う場合も想定される。したがって、監査人は、経営者が内部統制の評価の範囲を決定した後に、当該範囲を決定した方法及びその根拠等について、必要に応じて経営者と協議を行っておくことが適切である。